久保木修己会長の詩集

神と人、共に住める  久保木修己

これまで追われること六度
七度目に与えられた神の館は
祈りと聖歌で潔められ
裂迫の講義は赤熱の炎となって
この場所にサタンの侵入を許さなかった。
この神殿を見上げる時、
巨大とは言いがたいこの建物に神の雄々しさを感じて
思わず勇気が漲るから不思議だ。
内に入ると神の暖かさに包まれて
胸が熱くなりわけもなく涙が溢れてくる。
兄弟達よ!
ここに立つ時心の目をもて仰げこの館を。
さればこの聖域から天宙の極み迄
中天高く立ち昇る霊気が
昼雲の柱、夜火の柱となって
あのモーゼとその民族を導いた如く
今また吾等の行く手に見るであろう。
そしてこの国を世界につなぎ天につなげるための
ゆるぎなき勝利の基地であることを識るであろう。
(一九八二年『勝利の基地』より)

あたたかき涙     久保木修己
泣きつつ祈る血涙の中に
祖国を救う霊芽は青まるなり
弱き友よ! 貧しき兄弟よ!
道の戦いに選ばれたる尊き摂理を忘るる事なかれ
飢えに泣きし涙を拭わん
しいたげられて泣きし涙を通して
しいたげられたる者の涙を拭わん!
冷たきし人の魂は
祈り続くる温き涙によりて暖められん
汚れたる人の世は
祈り続くる清き涙によりて潔められん
涙のある処神は臨み給い
神の臨み給う時何事か成らざるものあらん
ああ 祖国の現在を顧みれば憂いに満ち
将来を思えは悲しみにとざされたり
愛し得ざる暗魂は紛争の悲劇を演じ
汗し得ざる病魂は荒息の悪風を生む
人は今全て大政治家の奪起を願い
世はあげて大宗教家の出現を求めたり

愛の統一      久保木修己
聞け 怒濤の雄叫びを闇の歴史に 悩みたる
嘆きの民が 求め来し解放 自由の旗高く
ああ 願いは愛の統一世界

見よ 雄壮な旗並みを輝く希望に胸躍り
集える我等 火と燃えて団結 勝利 限りなく
ああ 願いは愛の統一世界

起て 万国の同胞よ熱と力と涙もて
道ははるかに遠くとも救国救世 たゆみなく
ああ 願いは愛の統一世界

襤褸(ぼろきれ)の乙女  久保木修己
悩める者の為に一滴の涙をそそげ
飢える者の為に一片のパンを捧げよ
千金のほどこしも涙をはなれて世に益はなく
万哭の涙も愛をはなれて人に益なし
愛しうる生命躍動する時 名誉もなく打算もなし
狂かつ狂にあらずやむ能はざる至情の発露なり

形大なるとも誇ることなかれ大なる者必ずしも生命あらず
形小なるともさげすむことなかれ小なる者必ずしも無力ならず
明魂一度輝く時 乙女も亦救国の勇士なり

国家を担う双肩の汗 同胞を抱く両眼の涙
土に勤しむ兄弟よ 巷に励む姉妹よ
踏まるるとも縮むことなかれ打たるるとも怖るることなかれ
大任の下には必ず試練あり大願の前には必ず苦難なり


ああ若き獅子達
久保木修己
春の日の光を浴びて 萌え出ずる若草の如くさわやかな 生命を捧げ
ひたすらに 為に生きよと言い給う御声にこたえ 希望(のぞみ)ある
道を拓きて進み行く若き獅子達 成約聖徒

夏の日の湧き立つ雲と昇る陽の灼熱の如く燃えたぎる 生命をかけて
新しき時代(とき)を告げよと言い給う御声にこたえ 誇りある
道を拓きて進み行く若き獅子達 成約聖徒

秋の日の空いと高く 澄みわたる幼な児の如く聖らけき 生命を享けて
真理ある祈りに生きよと言い給う御声にこたえ 栄えある
道を拓きて進み行く若き獅子達 成約聖徒

冬の日の凍てつく風にその息のとまるが如き厳しさを受けて 耐えつつ
この民を 世界につなげと言い給う御声にこたえ 勝利ある
道を拓きて進み行く若き獅子達 成約聖徒


耐えて咲く花のように
久保木修己
花ぐもり山裾の梅園に 足を運んで 見渡す限り三千本の梅の香に身も心も吸い込まれた。
その姿は 老骨の如く 千々に折れ曲がり苔むした枝振りは 耐え抜いた
冬の厳しさを 忍ばせて 思わず粛然となる。

いにしえの貴婦人達が憧れた花びらは或は白 或は紅と 鮮やかに微笑みかける。
確実に春が来た。誇らしげに時を徴(し)らせて 花は輝く。

今 世界は永かりし冬の時代から 春を迎えて希望の花が咲きそめし候
その春の主役は この梅の如く 耐えて備えて生命を新たにした者に与えられる。
そして歴史の重みを識るものにこそ花は微笑みかける。

愛は立ち上がった
久保木 修己
地上には草花が風の中に頭をもたげなびいていた
獣たちはとびはね・・・万物はそのように美しかつた
しかし、このような中で一つの人間の姿があった
宇宙的法則よりはなれ不幸と絶望の中で顔をゆがめて泣いていた
悲しい人間の姿があった

善なる人間を殺し貧しい人を搾取し病める者を棄て詐欺と戦争と賭博とを追いあさる
人間の悪なる諸々の精神があった
このようなものたちの死の上に地獄はつくられ地獄の権勢はさらに地獄の権勢を拡張し
真理と生命と愛はふみにじられ偶像と虚偽は道を誇った
しかし、このような中にあって愛は死ななかった

白頭山と漢拏山 東海と西海の間に位置した
白ぃ無窮花の島で永遠なる神の愛は立ち上がった
今日 この日に

勝利の基地より   久保木修己
今、世界は終末(おわり)の徴(しる)しに重苦しく覆われ、
戦乱と業火は全地に満ちている。
人々は救いを求めて得られぬままに
虚無的一個の塊となり、破滅の底へと堕ちて行くのだ。

ああ、悩み多き者達よ、来りて憩え、この愛の園で。

希望(のぞみ)ある若き命よ、来たりて起て、祖国と未来のために
ここは汝等の故郷(ふるさと)なのだから。

聴こゆるか汝等をはげます神の御声と天軍の雄叫びを、
神は汝等の祈りに砕くる小さき魂を選び、
巨大なる御業のために備えられたり。

今、正に時は満ちぬ、
汝ら、御言の剣もて怒濤の如き
進撃をなすべき秋(とき)なり。

さらば人、神の民となり
神、自ら人と共にいまして
勝利は吾等のものとなり、
やがて新しき天と新しき地を見るであろう。

ああ救国の聖戦  久保木修己
神はその形を見ずしてその魂を見給い
その外を見ずしてその内を見給う
人は形の大なる者を仰ぎ
世は外の美なる者を上げたるも
神は祈りに砕くる小さき魂を選び給えり

疲るる者よ その重荷を降ろせ
悲しむ者よ その重荷を降ろせ
みどり子が母の乳房に笑む如ぐ
恵みの中に憩う時
ああ希望に満ち力強く立ち上がるなり

ああ救国の聖戦は
今や四方にたけなわなり
汗愛の雄叫び全地をゆるがして
祖国のいしずえまさに固からんとす
尊きかな 神の摂理 さかんなるかな救国の大業
さればこそ生命のある限り動き得る限り
戦い続け祈り続けて
天宙復帰の勝利者とならん


海は生きている  
   久保木修己
潮騒に心の歌を聴きに来た。
冬の暖い一日。
海はいい!
思わずつぶやく心の隅で
ふとなつかしい故郷のやすらぎが甦って来た
寄せては帰す波の音
それは天からの贈り物 愛の子守唄か。
幼な児が母のふところに一抱かれる様に
海は広く私達を包み又果しなく開放してくれる
それは飾らずつくらず自然の調和の美だ
人の世のどこにこれ程迄の美しさがあろうか。

海は荒れる 時として激しく悶える様に
海は荒れる どうしようもない苦悶の形相
凄まじく努涛となって岩に砕け散る
波しぶきは天の怒りか
調和を乱すものへの張り裂けんばかりの胸の
うちを余すところなくさらけ出して
これでもか これでもかと切ない。


リトル・エンジェルス       久保木修巳
そのあどけなく純心な演技にあふれるものは
人類がすでに忘れ去ろうとしている
魂の奥深く眠る本心の叫びではなかったか
少女たちが無心に踊りつゞけるその中に
私たちは、遠いはるかな叫びを聞く思いにかられる。
そして、そのたまゆら、魂のふるさとのリズムが、
さわやかな喜こびの中によみがえってくるのを知るのである。
小さな天使たちの、その清らかな透明のシルエットが浮かぶとき、
それはまるで、小さな胸いっぱいに祈りをこめて、
人類よ神に帰れ、親の子ふところに帰れと、声なき声を叫んでいるかのようである。
あるときはささ波のように、あるときは怒涛のように、
静と動のあざやかな世界が織り成されるときそれが、渾然たる調和と限りなき進歩と
を描き、安らぎと愛のぬくもりとを、よみがえらせてくれるのである。


富士は燃えた    久保木 修己
富士は暗かった
その暗闇の中で、希望に胸ふくらませる若者達の
瞳がきらりと光った
この国を支え来た多くの祖先達
この国を愛して来た多くの同胞(はらから)たちが
この山を仰ぎ、この頂に登ったことだろう
然しその誰よりも彼等の瞳は美しかった

歩き始めた若者達のはく息は白い
やがて、それは健康で明るい歌声に変わった
ししまを破って響く純粋な歌声を、富士は聞いて
感動にふるえた
そして彼等をまねいた

ふみしめる土の黒さにおおいかぶさるように
雲が湧き、風が流れ、光が溢れた
夜明けだ
義の太陽、そうだ義の太陽だ
思えば暗やみは長かった。然し明けるのは早い
青い光は紫に、そして冨士は真赤に燃えた
若者達の胸も燃えた。ふくらむ愛の鼓動は
天地のリズムに合わせて規則正しく琴糸の響きを奏で始めた
足もとに光りて舞う雲、躍動して昇る紅蓮の太陽
荘厳なるかな新らしき歴史を告ける大祝典の序曲
毅然として起つ若者遠の顔は朝の旭に照り映えて
余色に輝やいた
あゝ!これぞ神の子か
親なる神が求め、人類が求めた希望の実体がそこにあった
天は思わず、スポットライトをあてたのだ
まぶしい光をかさして、若者達は
流れる雲の果てに瞳をこらした
見渡す限り雲の海
アプラハムに神が約束した
「この見渡す限りのすべてを汝とその子孫達のために」
今、若者達はその声をきいた
この下に美しき山河と愛すべき国民がいる
そして、まだねむっているのだ
荘厳なる相続権の儀式は
如何なる舞台装置より華麗なる自然の妙図の
中で行われた
若者達は、あまりの感動と賛美と固い決意のために
誰も口をきかなかった
沈黙
この時、いたずらな言葉は神への冒涜だ
沈黙だけが神の心だと誰もが知っていた

富士に雪が降った
高き所で高き祈りを捧げる若者達の頬に
音もなく新雪が降ったのだ
匂いて舞う雪のあまりにも汚れなき純白さに
誰の目からも光るものが溢れた
心が洗われたのだ
ふるえて落ちる涙は、頻を伝って雪にかゝり
雪はとけた

洗われた心に統一旗が強くはためき始めた
「この旗のゆく所、吾は汝等と共にあり
勝利はこの旗と共にあり」
と語られた言葉がしみじみとよみがえる
若者達は起ち上り、又歩き始めた
この道は長く、止まってはいけないからだ
誰がいかなくても行かなくてはならない道
たとえ、つまづきたおれても
だから足を引きづりながら歩き続けた
苦しい時、この道をさきがけ人の事を思った
のどがかわいた時その人の事を思った
そして後から続いて来るもの達のために
祈りつゝ歩いた

神が愛したこの美しき祖国
だから愛さなければならない
神が汝等と呼びかけ求めたはらから達
だから私も尋ねて行こう
神が歩いて足跡を残したこの山河
だから私も歩いて行くのだ
どこ迄も続くこの道
ふりかえると富士はそこにあった
いつまでもそこにあった
そして若者達の歩く限り
その心から富士は永久に消えなかった